かわむらの
日々

着物

フォーマル着物の現場

数日前の富士山。まるで泡風呂に入っているかのような姿が面白くて思わずカメラを向けたのですが、どこにもアップするのを忘れたのでせめてここに載せておきます。日々変化の尽きないお姿が楽しいですね。麓に住まう住民の特権です。

さて、気づけば8月も残すところあと僅か。今月は色々と大変でしたね。コロナは再流行し、比較的抑えられてきた静岡県でも過去最多を更新し続けています。そうして迎えたお盆は、ほとんど雨。豪雨に見舞われた地域もあり、日本人にとって大事な期間を落ち着かない空気で過ごすことになりました。

うちの子供たちの学校は予定通りに2学期をスタートしましたが、お隣の富士市では月末まで夏休みを延長するようで、状況次第によっては再延長があるかもしれないと言われています。宿題を完成していなかった生徒にとっては朗報かもしれませんが、人が集うことが出来ない状況が続くのは決して良いことではないですよね。昨年の流行期にはリモートが次々に確立されて、それは良い改革だと言われていましたが、この状態が長く続くにつれその限界も多くの人が感じるようになってきました。

人が集えないことから生じる影響は、私たちの業界でも起きています。各種の式典が行われないことによるフォーマル需要の減退です。結婚式や受賞式などは真っ先に中止されましたし、感染状況によって入学式や卒業式も怪しくなってきますし、成人式なども中止の決定を下した自治体が既にあります。そういった場所に着ていく機会というものが圧倒的に減ってきている状況のなか、着物を新調しようとする人が少なくなるのは当然のことですね。

質の高い友禅を制作している現場でも、今が最も大変な時だという声を耳にします。ただでさえ減少傾向が強かったところにこのコロナですからね。ここを潮目に辞めてしまうところも少なくないようです。

しかし、当店とお付き合いのある工房の皆さんは、この状況のなかでも非常に頑張ってくれています。日本が世界に誇るこの技術を絶やさないために、ものづくりを続けてくれています。その心意気に応えるためには、当店も一品ずつでも仕入れ、次のものづくりに繋げてもらうことが大事だと思っております。

そんな流れで、この一品を取り上げます。

村山刺繍店より上がってきた付下げです。

金描きと刺繍で表した意匠化された松。全体から見ればあっさりとした柄つけに見えますが、刺繍の存在感がしっかりと重さを与えている良品です。商品紹介ページにも載せてありますので、よろしければ併せてご覧ください。

村山刺繍店さんは技術者を社員として抱え、友禅も併せて一貫したものづくりをしている会社です。外注にした方が今のような環境下では経営的に楽なんでしょうが、会社の姿勢を崩さずにこういった良品を作り続けてくれています。それもこれも、この技術の継承を真剣に考えてのことからと推察します。

そういった思いを多くの皆様に伝えるのも小売店の大事な役割。当店もしっかり頑張ります。

 

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