かわむらの
日々
着物
ムガシルクの着物
商品紹介ページと重複しますが、今日はこんな一品を取り上げます。
インド原産のムガシルクを経糸に織り込み、地紋を花織様に織り出した紬。
十日町のメーカーによるものです。後染で市松暈しを表して、少し格上に見える顔つきに仕上げてあります。
ムガシルクとは、インドのアッサム地方で飼育される野蚕から採られる絹糸です。10年ほど前の資料になりますが、インドでのシルク総生産量約16000㌧のうち、ムガの生産量はそのうちわずか0,5%にあたる80㌧でしかありません。希少さも然ることながら、その独自の光沢からインド王族を始め高貴な身分の人々の衣装として使用されてきました。
本来、製品化した物の輸出しか許されていませんでしたが、十数年前に糸としての輸出も解禁となり世界中から注目を集めました。日本の和装業界もいち早く取り込み、この糸の特性を生かした着物や帯が盛んに制作されました。
特性はまず細さ。普通の絹糸が平均3デニールの太さなのに対し、ムガは約2,5デニール。次に軽さ。これは野蚕特有の多孔性に由来します。
上の資料にあるように、普通の養蚕糸に比べて密度の低さは歴然です。そのため非常に軽く、加えて吸水性と防水性にも非常に優れています。また、抗菌性にも優れ、紫外線カット率は約90%あるそうです。ムガシルクの日傘というアイテムがありますが、適品なんですね。
糸価がとても高いため、この一品では経糸のみムガを使用し緯糸は紬糸ですが、軽さとしなやかさは充分に感じられます。加えて、上にあげたその他の特性を考慮すると、今の季節に非常に適したアイテムということになりますね。市松暈しの染加工もあり、普通の紬よりも幅広く着られそうですし、なかなか使える一枚になってくれそうです。