かわむらの
日々
紋紗の羽織
今日から8月です。例年ならばこの月の初旬には、当店が所属する富士宮本町商店街では「七夕祭り」が開催されます。それがコロナの影響により昨年に続いて中止に。せめてもの雰囲気作りとして各店に小さな飾りが付けられていますが、今年も寂しい夏になってしまいました。
この時期らしい日射しの強さは変わらずで、本来なら気持ちも明るく活動的になりたいものですが、それはいけない事だと咎められる日々が続きます。仕方ないと分かってはいるのですが、何とかならないものですかね。
今日取り上げるのはこちら。
紋紗の着尺です。透け感が涼しげで、夏の着物として、また冬以外のスリーシーズンの羽織ものとして人気の高いアイテム。
当店では羽織として仕立てる方が多いですね。動きによって起きるモアレが着姿に味わいを深め、とても魅力的。春秋のお出掛けにはもちろん、夏場であっても塵よけ的に愛用されている方もいらっしゃいます。「この暑さの中で?」と思われるかもしれませんが、現代では会場も移動中の車両もしっかり冷房が効いていることが多く、羽織ものやショールなどの「もう一枚」が意外に必要だったりするものです。
薄物は織るのも染めるのも難しいと、よく言われます。染の醒ヶ井さんの社長さんだった澤田さんがよく言っておられました。「透き間の多い生地ほどムラが出やすく難しいのに、軽いから安いやろと簡単に言う小売店さんが多くて参ります」と。そうなんですね。機屋さんの方でも薄物は敬遠するところがありますものね。
それを聞くまで自分も「軽い=安い」と思っている小売業者の一人でしたが、今はその価値を理解し技術の継承を切に願っております。地元の祭りも然り、伝統工芸も然り、一度途絶えたら再び興すことは困難ですから。
私たちも頑張るので作り手さんたちも頑張っていただきたいものです。