かわむらの
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小紋 手描きの蝶について

残暑と呼ぶには厳しすぎる暑さが続きます。日中は外へ出るのも躊躇われるほどですね。熱中症にはくれぐれもお気をつけください。

今日はこんな一品を取り上げてみます。千切屋の羽衣染ブランドとして出された小紋、手描きの蝶。

既に商品紹介ページにも掲載してあるのですが、ちょっと説明があっさりしすぎていたかなという反省がありまして、こちらで再度取り上げてみることにしました。(紹介ページも後日直しておきます)

題にもある通り、これらの蝶たちはすべて手描きで表されています。数えてみたら一反の中に45羽、そのうち1羽として同じ配色のものはありません。手描き友禅の、一つひとつが手仕事だからこそ成し得るこだわりが詰まった一品だと、以前から紹介してきました。

一反に45羽という数も、これは仕立て上がった時の柄配置を考慮して描き込まれていることが分かります。

染め出し部分から、袖分をやり過ごして身頃の丈を出して見ました。ついでに帯をコーディネート。梅垣織物の九寸なごや帯です。

アイテム分けすれば小紋なんですが、柄配置のバランスは付下げ的にも見える感覚に取られていることが分かります。今は着物の格におけるボーダーを曖昧にした品作りも多くなってきていますね。ちょうどカジュアルとセミフォーマルの間のところで。

ここに上げた千切屋の小紋と梅垣の九寸帯などは、正にその象徴的なアイテムと言えるのではないでしょうか。今はコロナで式典自体がなくなっていますが、近年の着用シーンでは必ずしもカチッとしたフォーマルでなくとも許される、むしろ少し軽い方が相応しいような場が増えてきていました。披露宴もレストランで、とか。そういった場所には重い訪問着よりも、暈しが入るだけのような無地感覚が良いと考えられるのは当然と言えば当然かもです。

ただ、ここに上げた両者ともに仕事がきっちり丁寧に施されていることは、画面を通しても伝わるでしょう。アイテムとしてはカジュアル寄りでも仕事の重さがそれを感じさせないという、染織品としての質の高さはもちろん重要ですね。

着物にとっては着てもらえることが最も大事です。現代のシーンに映え、時代に合った形の中に質の高い技術を表現できれば、多くの人の支持を得られて未来に繋がるのではないかなと、残暑のなか汗をかきつつ考えておりました。

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