かわむらの
日々
更紗小紋の帯合わせ
質が高く、個性的な友禅で人気が高かった染の北川。なくなってしまってから数年が経ちますが、当店にはまだ同社が手掛けたものが数点あります。いずれも現在では希少なもので、今日はそのうちの一点、更紗の小紋を取り上げてみます。
更紗について簡単に説明します。発祥はインドと言われていますが、その後世界中に伝播しそれぞれ独自の発展を遂げました。有名なものではインドネシアのバティックなど。オランダを中心にヨーロッパにも見られ、我が国には室町時代に入ってきたと見られています。
時の茶人を始め有力者に愛され、舶載品の収集が盛んに行われると共に国内でも作られました。これを和更紗と呼びます。江戸時代に入り木綿にも染められるようになるとより広く普及し、煙草入れなどの小物にも使われるようになっていきます。
改めて、北川の小紋。墨を輪郭線に摺り込むカチン摺り技法による、味わい深い仕上がりです。型紙の枚数も多く、文様のボリューム感も高いですね。
この文様のボリューム感から、また、文様の独自性から、帯合わせを迷う方が多いのも事実です。この一品に限らず、お手持ちの更紗のコーディネートに関するアドバイスを求められることがよくあります。なので今日は、この北川の更紗小紋にいくつか帯をのせて当店なりのコーディネートをお見せしようと思います。
まずは、市松に染め分けた小千谷紬地の九寸なごや帯。制作はフジモトです。色合いが近い具象的でない文様ということで、こういった感覚は基本的に間違えないでしょうね。
同じような理由から、読谷山花織の九寸。比嘉恵美子さん作。
手描きの献上文。フジモトの塩瀬九寸。クセが強い同士を近づけてどうなることやらと心配したけど、あら意外に仲良くしてるじゃないと言った感じでしょうか。個人的にはとても好きですけどね。
更紗に更紗という、禁じ手とも言われそうな組み合わせ。手織つづれ地に金描きの八寸帯。制作は醒ヶ井です。重みはあるけどスッキリしていて綺麗にまとまってはいます。
ガラッと変わって、引箔に金駒刺繍の九寸。醒ヶ井作。当地にまだ花柳界が存在していた頃によく求められていた感覚ですが、ここに引っ張り出してみました。蔦紋ということで、更紗と少しは繋りもあるかなというこじつけも込めています。
最後はフジモトの丸文。地色もピタリと合っていて、間違いない組み合わせでしょうね。更紗のエキゾチックな雰囲気にも沿っていますし。月を思わせる丸文と更紗の組み合わせ、文様的にも色々な解釈が出来そうで面白いです。
歴史も長く重みのある更紗文様、チャレンジする人が増えてくれると良いなと願いつつ、本日の投稿を終了いたします。お付き合いありがとうございました。