かわむらの
日々
黒地もしくは濃地の夏物
昔の人からよく「暑い時期こそ本当は濃地の着物がおしゃれなんだよ」と、聞かされておりました。そんな言葉が耳に残っているのか、黒地や濃地の夏物に手が伸びることが多い当店です。
実際にお客様が選ぶ段になると、やはり涼しげな色に落ち着くことが多く、夏の濃地は残りがちだったのですが、今年はシーズン前から黒地もしくは濃地の夏物にお声が掛かることが目立っています。店頭で色々とお見せしたついでに、ここでも一部アップしてみます。
丹後の紋紗地に引染ぼかし。透け感のある生地に引染するのはなかなか大変な仕事だと、メーカーの皆さんからはよく聞かされております。よく知らずに「生地が軽いぶんだけ仕事も軽いのではないか」なんてことを言っては嗜められたものでした。透けてるぶんだけ染料の扱いは難しいんですよね。
同じく紋紗の地に墨流し染。マーブルのような味わいで人気があります。偶然性の高い染め方にスポットを当てて「幻の染」なんて売り方をしているところもあるようですが、確かに見た目幻想的ではありますね。
十日町の薄物紬。絣で笹竹を表した一品です。昔は粋紗なんて呼びました。着物雑誌では紗紬という呼び方をしてるところもありますし、夏大島なる商品名をつけているメーカーもあります。色々な呼び方をされていますが、十日町の紬地です。下手に大島なんてつけなくても、手軽で粋に楽しめる十日町紬でいいじゃないかと思いますけど。
最近ご要望いただくことが多くなったシルックの夏物。探してみると黒地が少ないですね。当店周辺では需要が増しています。各メーカーさん、地方の小さな小売店からの小さな声での要望ですが、夏の濃地を増産していただけるとありがたいです。見ていましたらよろしくお願いします。
黒地や濃地の夏物は、着物としての着用のほかに羽織やコートで利用される方も多いです。特に最後に紹介したシルックで、雨コート代わりに仕立てる方も多くなってきています。気の利いた雨コートがなくなっている昨今では、合繊素材の洒落た柄で自分オリジナルなものを作ればそれに越したことはないですよね。ただいま絶賛おすすめ中です。