かわむらの
日々
正倉院文様小紋の帯合わせ
空気の冷たい今朝は少し雨も降って、その後の晴れ間から覗いた富士山には雪が積もっていました。いよいよ冬の到来ですね。
今日は帯合わせを紹介します。
選んだ着物はこちら。フジモト制作の小紋です。正倉院文様のひとつ、花喰鳥文様を型染と手描きで多層的に表現した一品。小紋とはいえ品格あるこの文様に、帯を数点合わせてみます。
まずは梅垣織物の九寸帯で。梅垣さんの九寸は袋帯にも負けない品格があり、付下げや訪問着にのせても位負けしません。この小石花丸文は、地色も着物と通ずるものがありますし、表された花文は架空のものということで、事物を限定されることがないので心配せずに合わせられます。
続いては、勝山の本綴八寸に醒ヶ井で金描きさした更紗文様。まあこれも違和感なく見られますよね。ちょっとフォーマルに向いてる感もありますけど、しゃれ着としての味もちゃんと感じます。この辺りが、この小紋の帯合わせには大事かなと思うところです。
と言った後ですぐにカジュアルに振れてますが。米沢出羽屋からの一品で米沢織八寸。色と文様のリズムが良いかなと思い選びました。
最後は杉村のすくい織九寸帯。縞ですからね、合う合わないとかないだろうという声が聞こえてきそうですが、うん、その通りですね。合わないわけがないと言った感じですね。ただ、杉村さんのこの一品は適度な光沢もあり、この小紋とはより好相性だなと常々感じていて、それゆえ敢えて取り上げてみたかったのです。
悠久のロマンを感じる正倉院文様。しゃれ着としてのテイストを保ちつつ上品に見える組み合わせを目指してみました。いかがでしたでしょうか。
筆者は昔、京都に住んでいた時期があり、その時代にはよく奈良へ足を伸ばしました。「文様の勉強のために正倉院展へ」と言うわけではなく、専ら仲間たちとラーメンを食べに。(天理ラーメンが好きだったので、夜中に車を走らせて片道二時間ほどかけて行きました。)
帰りしな、若い時の好奇心で、夜中の奈良公園などもよく徘徊しました。ある時、人気もない真っ暗な奈良公園に佇んでいると、誰かが僕の背中をノックします。隣にいる友人のイタズラだと思い、「止めろよ」と言うと、友人はキョトンとしています。あれっ?と思い振り向いてみたら、僕の背後で鹿がお辞儀を繰り返していました。
驚いて大きな声で叫ぶと、鹿はそれ以上に驚き飛び上がって逃げていきました。今はどうなっているか知りませんが、当時は夜中でも公園内を鹿が闊歩していたんですね(25年くらい前です)。その鹿は珍しく夜中に人の姿を見て、鹿せんべいを貰えるかと近づいたのでしょう。せんべいどころか一喝をくらい追い返され、悲しい思いをしたことと思います。申し訳ないことをしました。
コロナの影響で観光客が激減し、鹿がせんべいをもらえないというニュースが取り上げられた時期がありました。あれを見るたびに上記の件を思い出し、心がチクチク痛んだものでした。
コロナが収まったらまた奈良に行って、せんべいあげたいですね。ついでに、ではなく今度こそは正倉院展を主目的に行きます。