かわむらの
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着物

丹後薄物紬と帯屋捨松夏帯

卒業シーズンですね。自分が最後に何かを卒業してからはや30年近く経ちますが、この時期を迎えると何故か毎年ソワソワしてしまいます。どこかに移動するわけでもないし、誰かと離れるわけでもないのに、何となく自分もまた卒業しなければいけないような気持ちになってしまうのです。変ですね。

当店でも今年は、甥っ子二人がそれぞれの学校からの卒業を迎えました。叔父の頭のなかでは小さい時のイメージがまだ生き生きとしているのに、実際の姿を改めて見てみると大きくなっていることに驚かされます。時の流れの速さを実感する瞬間ですね。

紹介品は季節を少し先に進めます。

丹後産地で織られていた薄物の紬地に、当店で選んだ色で無地染をかけた一品。白山紬の風合いに近い感覚で織られ、白山と同様、染下地にも使われていたものでした。過去形で書いていることから察せられるように、メーカーはすでに廃業しています。当店も白生地のまま長く持っていましたが、醒ヶ井さんと相談のうえ微妙な感覚の紫に染めてみました。

相方は捨松さんの夏八寸帯、蝶と波です。このシリーズのなかでも人気のある文様ですね。明るい地色は夏の日差しのなかでも映えますし、その前の単衣時期にも相応しい感覚です。

この紬の方も薄物とは言え完全な透け感ではないので、単衣時期の中盤以降からは活躍させてあげられそうです。さらっと楽しんでいただければ良い感覚ですね。

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