かわむらの
日々

着物

暑い…ですね

早朝を選んで庭の掃除をしたのですが、気がついたら少しクラクラしていました。暑いですね~。各地のオリンピック会場でも暑さが話題になっています。灼熱の地というイメージのあるアフリカの人たちも参るくらいの暑さだそうで、そんなことを聞かされると何だか申し訳ない気持ちになります。

気温も勿論なんですが、日本の場合は湿度の高さも体感温度を上げる要因になっていますね。諸外国の皆さんも湿気に音をあげているようです。この多湿な気候をいかに快適に過ごすか、日本の衣服の歴史はその課題に向き合いながら発展してきたと言われています。口が開いた部分が多く風を取り込みやすい着物の形状は、その意味からもベストな選択なんでしょうね。夕方の風を感じられる時間帯に浴衣姿でいる時などには、体に密着したシャツとはまた違う快適さを感じ、この国でこの衣服の形状が支持されてきた理由が少し分かるような気がするものです。

商品紹介ページにも掲載しているものですが、当店の夏物を一品ご覧ください。

醒ヶ井の付下げ。薄物に織られた小千谷の紬地に、水辺に遊ぶ蟹の様子を素描きで表したものです。

さらりと描いた感じなんですが、山中に流れる川のせせらぎや風に揺れる木々の音などが聴こえてきそうで、そういった連想から涼を感じます。これも特に友禅開発以降の日本の衣服に特徴的な部分ですね。文様で季節を感じさせたり物語や故事を暗示したり、多彩な文様表現が友禅によって可能になりました。その多彩な表現の中でも、夏の衣装での表現は単に季節を表すだけでなく「涼」を求めるというテーマが込められている例が、今も昔も多いですね。

涼を求めて南極まで行ってしまいました。以前ここでも紹介した成謙の染帯です。これはかなり思いきった例ですが、夏の柄として雪輪が多用されるのと目的としては同じですね。

こちらフジモトの夏小紋。段ぼかしの中に描き疋田を入れ、里に降り積もる雪を表しています。南極までは行かなくとも、冬景色の暗示で夏物に涼を求めた一例です。

現代の猛暑は心の持ちようで対処できるレベルでないことは自明ですが、熱中症を避ける対策をしっかり取りつつ、こういった気持ちの面から季節を楽しむ日本人の感性を大事にしていきたいものです。オリンピックを見ながらそんなことを考えてしまいました。

 

 

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