かわむらの
日々

帯合わせ

エジプトと葡萄唐草

今日はお客様からのリクエストを受けて、村山刺繍店制作の九寸なごや帯を取り上げてみます。

単品での紹介は寂しいので、相方に塩沢を選んでみました。古代エジプトの壁画を型染で表したものです。

葡萄唐草→ワイン→何かエキゾチックな柄がなかったかな→あ、あれがあった、という感じで短絡的に選んでみましたが、9月の単衣シーズンを過ごすにはちょうど良いアイテムですよね、柄的にも。

古代エジプトの葡萄栽培とワイン造りですけれども、非常に盛んに行われていたようですね。身分の高い方々の飲用というよりも、神々への供物として重視されていた痕跡があるみたいです。日本でも神様に日本酒をお供えするように、古今東西を問わず酒と神様は深い関わりを持っているものですね。

更に、葡萄という種の歴史の深さにも改めて感嘆します。古代エジプトを遡る紀元前6000年頃には、現在のジョージア辺りで栽培された痕跡が見つかっています。たわわに身をつけることから豊穣を連想するのは、古代の人々も同じだったのでしょうね。

帯のモチーフになっている葡萄唐草文様の歴史も古く、古代ギリシャの壁画で確認できます。やがてシルクロードを渡り仏教とも結びつき、中国に渡ってからは多くの染織品にも用いられるようになりました。日本でも奈良時代の遺品には葡萄唐草文様が盛んに表されています。

以上、葡萄と葡萄唐草文様の歴史を簡単に記してきましたが、洒落味の強い友禅で表した染帯ですから、気軽に楽しんでいただければ良いと思います。黒地に染めたことで浮き出る銀通しの生地に、文様を縁取る銀駒刺繍が更に静かな豪華さを加えて、とても魅力的に仕上がっています。

9月の単衣シーズンにも相応しいですし、ボジョレー・ヌーボーの頃にも良いですよね。その頃にはワタマサさんのワインボトル文様の御召と合わせてみようかな。

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