かわむらの
日々

帯合わせ

名月と鳥獣戯画

九月の声を聞いた途端に、気温の方も急に秋らしくなってきました。人間は勝手なもので、涼しくなってくると逆に、夏のうだるような暑さが懐かしく思えたりします。真から楽しむことが出来ない夏が二年も続いたから、余計にそう思ってしまうのかもしれませんが。

とはいえ、涼しさが増してくるほど着物には好適シーズンです。今日は今年上がってきた新作より、今月に似合うアイテムを紹介します。

丸文を月に見立て、名月を祝う鳥獣たちの宴の図といったところ。

最初は薄色に引染を掛け、丸形に防染した上で濃色に引染、丸形の中を金彩加工などで陰影を付けて仕上がり。フジモトさんの仕事です。染下地の塩瀬も最高クラスを使用し、このシンプルな染仕事を重厚に映すことに貢献しています。

相方の小紋もフジモトさんの仕事。わざと崩した疋田文様が独特なうねりを表現し、鳥獣たちの動きに味を加えます。彼らが手にしている草木や、茶を軸にした全体の色からも、どことなく秋の雰囲気を感じさせますね。

十五夜は21日。こうした季節の行事を楽しむ心は忘れずにいたいものです。そして、月は一年中でているものですから、この帯は季節を問わず楽しめることを追記しておきます。鳥獣戯画も然りです。

 

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