かわむらの
日々

着物

雪持ちの笹と南天

11月に入っても暖かい日が続いていましたが、今日はお日様も出ず肌寒さを感じる日になりました。四季がある日本ですから、ちゃんと季節が進んでいるという証ですね。深まり来る秋と、その先に待つ冬も楽しめるように心の準備をしておかなくては。

商品紹介ページにも既に載せてあるのですが、今日はこの一品をこちらでも取り上げます。

手描き友禅の訪問着です。

地に施された蝋タタキ染が雪を表し、裾でそれが降り積もり雪持ち笹になるという表現ですね。笹と共に南天も描き込まれています。

雪持ち笹は桃山時代の小袖にもよく見られる文様で、細い茎の笹が重い積雪に耐えながらしなだれている姿を表すことで、やがて来る雪解けの喜びと共にそれまでを耐える強靭さを表現していると言われます。白い雪と常緑樹の瑞々しい緑の、色としての対比も美しいですね。日本人が好む要素が複合的に詰まった文様と言えると思います。

冬という季節を表すと同時に人生訓も込められているということで、結婚式や何かの受賞式などでの着用が相応しいでしょう。「人生には3つの坂がありまして~」などというスピーチよりも粋にメッセージを伝えられそうです。

この一品、中学校などで講話を頼まれた時に、友禅が単なる文様表現をしているだけでなくメッセージを込めているという一例として取り上げたりしてきました。来年もある学校から頼まれているので、在籍していたら連れていく予定でいますが、そろそろ何方かにお嫁入りしてくれても良いなと思う今日この頃です。

長い冬、重い雪を耐え忍んで栄光の雪解けを迎える。コロナに苦しめられた近年だからこそ、よりこの意味が光るように思いますね。本当に何方かいかがでしょうか。

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