かわむらの
日々

帯合わせ

綴袋帯「観月図」


厳しい残暑を少しでも忘れるべく、最近は秋をテーマにした品物やその組み合わせの紹介を続けています。今日もその流れに従い、組み合わせ例を一つ紹介します。

主役は帯です。植山正織物の綴袋帯「観月図」

竜頭船に乗って観月の図ですね。架空の動物の頭を船首にした船に乗り、漕ぎ出す池や湖を異空間のように感じ楽しむというこうした趣向は、唐代の皇帝によって始められたものと伝わります。日本では嵯峨天皇の時代に伝えられ、平安貴族の雅な遊びとして盛んに行われたようです。

現代でも、京都の大沢池では観光的に竜頭船を運航していますね。観月の宴なども行われているということで、機会があればそんな楽しみを味わってみるのも一考です。

そんな情景を表したこの帯は、この季節と題材に限定した贅沢な一品です。これからの季節、行く場所で喜ばれる着姿になることでしょう。

合わせた付下げはフジモトの松文様。フジモトにしては珍しい無線友禅で写実的に描いた一品です。帯とは対称的に季節を問わない松文で、幅広く着用することが出来ます。着物の秋らしいものを選んで完全秋コーデというのも有りでしょうが、帯のテーマがはっきりとしたものだけにこれくらいの感覚をおすすめします。

やや冷たさを感じる空気のなかで観月など、今の時期からすると憧れてしまうシチュエーションですね。季節を楽しめる文様選びも、着物の楽しみのうちの一つです。ぜひ実物もご覧ください。

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