かわむらの
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着物

シケ引き 無地感覚

九月も半ばを迎えようというのに、連日の猛暑です。日中の日差しの強さ、雲の様子など見ていても、それらは確かに真夏のものですね。「終わらない夏」なんて言うと、歌の題名か歌詞に出てきたら素敵な表現に思えますが、実際にいつまでも終わらないと怖さを感じてしまいます。まあ、暑い間は暑さを楽しめばいいか。今日もビールを楽しみに一日頑張ります。

そんな状況でも、秋冬に向けての仕込みは怠りません。今日はこんな一品を紹介します。

色無地かと思われたかと思いますが、全体に染め加工を施した無地感覚です。

シケ刷毛という特殊な刷毛を使って線表現をするシケ引きを、生地に対して斜めに施しております。「刷毛で線を引く」と言うと単純な仕事のように考えがちですが、この優美な線をブレなく仕上げるのは非常に難しいのです。

このシケ引きの仕事、当店でも昔から数多く扱ってきました。中でも、御年104歳まで長寿を保たれた名工、山中政治郎さんの手がけたものは深みのある表現でとても印象に残っています。そして実はこの一品、その山中さんの後継であるご子息さんの手によるものです。(ご子息さんと言っても既に80歳を超えていらっしゃいますが)

シケ引きは他の技法と共に施されることが多く、その際には脇役に徹することが多いです。でも、その奥ゆかしさが逆に、それを主役にした時には大きな味になり魅力になります。この一品も、一見では普通の色無地に見えますが、そこにはやはりこの技法ならではの深みが加えられていて、着姿には確実に違いが出ます。

後継である山中さんの次は今のところいないと言うことで、ここでも継承の難しさが存在しています。魅力をより多くの方に伝えるべく、小売店として努力しなければと思う毎日です。

 

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