かわむらの
日々
小紋「ヤツデ」にすくい八寸帯「洋花絵皿」
先日、庭の木を剪定しまして、家全体が明るくなったような気がして心が上がっている毎日を送っております。昔の人は庭木にも縁起を担いだものですね。代表格としての槙、魔除けで有名な南天、富を表す千両、万両、「借りん」に通づるカリン。うちも祖父母が作った庭なので一通り植えてあります。広さは大したことないので手入れもそいう大変ではなく、毎年楽しませてもらっています。
その中でも、私が個人的に好きな植物がヤツデです。大きな手のような、または天狗の団扇の様なあの葉の姿に、子供の頃から惹かれてきました。うちの庭にも植えてあり、季節を問わず青々と伸びる葉を楽しんでおります。
このヤツデ、その大きな手のような葉が招福や千客万来に繋がり、吉祥文様としても認識されています。数としてはそう多いわけではありませんが、着物の文様として取り上げられることもありますね。
こちらがその一例。フジモト制作の小紋、品名もそのまま「ヤツデ」です。糊伏せの重ね染で表した、なかなかに大胆な表現ですね。羽織用にも使えると思い入れましたが、今日は帯合わせしてみます。
植山織物のすくい織八寸帯「洋花絵皿」。文字通り、絵皿に描かれた洋花からインスピレーションを受けて文様化したものですが(絵皿自体が既に文様ですが)、ざっくりとした表現と複雑に色糸を織り込んだことで表される地色が相まって、なかなか面白い感覚に仕上がっています。
本当は無地感覚の紬などに合わせて軽く装ってもらうのがお洒落かと思うんですが、それではここで紹介する意味も少ないと思うので、このヤツデにのせてみます。植山さんがよく言っていた「一見して何かよくわからん柄が実は何にでも良く合う」という言葉通り、帯あわせが難しそうなこのヤツデ柄にも無理なく寄り添ってくれています。良い女房役です。
ハラ文。画像ではうまく表現できていませんが、とても微妙な地色の感覚です。これは実物でぜひ見ていただきたいですね。
十月も半ばに近くなってきましたが、秋と呼ぶにはまだ少し気温が高いですね。あともう少しかな。着物をより楽しめる気候が待ち遠しいです。