かわむらの
日々

帯合わせ

今年も一年有り難う御座いました

自宅近くのグラウンドから望む大晦日の富士山です。この季節らしいお姿。

コロナに振り回された一年も、いよいよ最終日を迎えました。いつか落ち着くだろうと言われながら、今に至っても終息の兆しが見えないままですね。

当店にとっても、例年にも増して印象的な一年になりました。春先に始まった流行からステイホームが叫ばれ、子供たちの学校も休校措置が取られるなど前代未聞の事態が続きました。当店のお客様が主に着物を着ていく場所の結婚式やお茶会なども次々に中止となり、年明けの成人式も取り止めです。人が外に出なければ装う必要もない。スーツ業界が窮地に陥っているというニュースを耳にしながら、他人事ではないなと感じたものでした。

しかし、悪いことばかりでもなく、ステイホーム期間を自宅で過ごす時のスタイルとして、カジュアルなものには大きな注目をいただきました。浴衣や綿、麻織物については例年以上の売上があり、また、こういう時だからこそ節目をしっかり祝おうというご家庭も多く、七五三関連の着物がよく動きました。

時代が動いて失う需要があり、逆に生まれる需要もあるということを学んだと同時に、当店を可愛がってくださるお客様に対する感謝の気持ちを一層深くした一年になりました。お客様が来店してくださるのは決して当たり前のことではない、まさに字の通り「有難い」ことなんだということを、この稀有な危機を迎えたなかで身に沁みて感じました。来る年にも、この気持ちを忘れることなく一人ひとりのお客様に誠実に、真摯に向き合うことを誓います。

今年最後の紹介品を。

寿光織の縫取に植山正織物の綴袋帯。題材は共に南蛮屏風の世界ですね。

かつては一世を風靡する人気があった寿光織の縫取、今はもうほとんど作られていないようですね。織のものですから、一定以上数が出なければ出来ない仕事です。これらは千切屋さんが持っていた最後のものを分けてもらったうちの一点。

南蛮船を表した植山さんの一品。普通はこんな風に同じモチーフを重ねる組合わせはしないものですが、今日はこの勇壮で賑やかな雰囲気をお伝えしたいので敢えて合わせてみました。来る年が賑々しく明るいムードになることを祈念しつつ。

今年の当店が迎えた転機はもうひとつ、他ならぬこのホームページの開設です。ちょうどコロナが流行し始めた春先から準備をはじめ、秋にスタートできました。制作会社さんにこちらからお願いしたことは、私たちの考え方や声がお客様によく届くサイトにしてほしいという一点です。商品を売ることが大きな目的ではありますが、それだけではなく語弊を恐れずに言えば「血の通った商品カタログ」的なものにしたいという表現で伝えました。結果、商品紹介とこの「かわむらの日々」の二本を中心とした構成で、内容は一から私が作り上げていくという形にしてもらいました。日々動かしていくのは大変ですが、満足しています。

来年もより多くの方との出会いがあればいいな、出会えなくとも、このサイトを見ていただいて少しでも共感してもらえればいいなと思いつつ、進めていこうと考えております。店舗の方では新年四日からのスタートですが、このページはそれより早く更新するつもりですので、皆様宜しくお付き合いください。

それでは、本年もご愛顧誠に有難う御座いました。良い年をお迎えください!

 

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