かわむらの
日々

帯合わせ

縫締め絞り小紋と塩瀬染帯

昨日までの三連休の間に、どんど焼きを行った地域も多かったようです。郊外の方に車を走らせていると、広場や公園などに火が上がっている様子が見えました。世間がコロナで騒がしく、自分もつい気が急いてしまっていましたが、そんな気持ちに温かみを与えてくれる光景でしたね。

関西地方では左義長と呼ばれますね。古くは平安時代の宮中で行われていた行事にそのルーツが求められ、そこから伝播して九州から東北までの日本各地で行われているようです。

当地富士宮市のどんど焼きに見える特徴は、道祖神信仰との関わりです。かつては、あの火の中に道祖神を投げ入れるという習俗がありました。道祖神は「塞の神」とも呼ばれ、村の境目にいて共同体に疫病や災厄が侵入してくるのを防ぐ神様と考えられてきました。どんど焼きの火に投げ入れる意味は、火の力で道祖神を清浄化し、その霊力を新たにしてもらうことを願っての事と説明されています。

そしてもうひとつ、災厄そのものを道祖神に背負ってもらうという考え方もあったようです。市内の淀師という地区では、道祖神を火に入れるほか水路に投げるという風習があったようです。熱かったり冷たくされたり、道祖神様もたまったものではないでしょうが、こうして身代わりに災厄を背負っていただくことで、皆が一年を無事に暮らせることができると考えられたようですね。

今年はコロナウィルスの影響で、どんど焼きも中止する地域があるようです。この行事の意味を考えると、今年こそこの行事が必要ではないかと思いますが、致し方ないですね。残念です。

今日の紹介品はこちら。

年末にフジモトさんから上がってきた縫締め絞りの小紋に、濱本信博さんの染帯「五葉松」を合わせました。

縫締め絞りは、文字通り「縫」って「締」める技法です。生地を糸で縫い、引き締めて染めることで不染部分が出来、それで文様表現します。糸を入れる間隔や締める力の強弱で様々な表現が出来る技法です。

主役となる縫締めのほか、地の部分にも暈しを始め複数の染加工が施されています。飽くまでも主役を引き立てるための控えめな加工ですが、味わいを深める効果は大でしょう。画像ではそれを上手く表せないので、お近くの方は実物を見ていただければ。店内に展示しておきます。

今の季節にふさわしい柄として選びました、濱本さんお馴染みの五葉松。同時に松ですから他の季節でも大丈夫。年代も着用範囲も幅広い組み合わせですね。

一月も中盤を迎えて、小正月が過ぎれば次は節分。今年もまた慌ただしい一年になりそうですが、季節を楽しむ心だけは忘れないようにしたいものです。疫病退散を願いつつ。

 

 

 

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