かわむらの
日々

帯合わせ

無線友禅の松で帯合わせ

今日の富士宮は春の嵐に見舞われています。午後から夕方にかけて勢いを増すと予想されているので、お近くの皆様は気をつけてください。SNSと違い、同時性の高い読み物ではないこのコーナーで呼び掛けることにどれほど意義があるのか分かりませんが、荒れた外の光景がどうしても目に入る位置でこれを書いていますので、どうしても気になってしまいますね。

こういう嵐を越えていけば、いよいよ本格的な春の到来でしょう。予断を許さない状況が続くとは言え、季節が明けてくるのは嬉しいものです。気持ちも上向きにしていきたいものです。

今日は、新しく仕上がってきた品で帯合わせをやってみようと思います。その一品はこちら。

商品紹介ページには既にアップしてありますが、この春の一番手として上がってきたフジモト制作の付下げを取り上げます。

真糊を使った糊糸目での友禅が多い同社では珍しい、無線友禅で描き上げた松。精緻にして躍動感ある表現が秀逸です。季節を問わないモチーフではありますが、柔らかにして複雑に上がった地色と暈しの感覚に、どことなく春の雰囲気を感じる一品です。これに数点の帯をのせてみますね。

まずは梅垣織物の袋帯、二条城襖絵文。カチッと決まったフォーマルにして、明るい春の雰囲気を出してみました。結婚式のお呼ばれなどに最適な感じですね。

同じような目的で、となみ隆の宝尽くし文様袋帯を合わせます。松に宝尽くしということで、吉祥文様をこれでもかと。どこまでも目出度い組み合わせです。

ちょっとシックに。東宮織物の唐草文様。江戸時代の小袖から取材した文様だそうですが、単体で見ると非常にバタ臭い感じを受ける帯です。でもこうして純和風な柄に合わせてみてもしっくりくると言うことは、やはり「和」なんですね。

ちょっと趣味性を高くして、植山正織物の五位鷺を。柔らかく仕上げた綴織で、植山さんとしては紬などにも合うようにと考えて制作したようですが、セミフォーマルで文様と組み合わせた方がやはり活きるんじゃないかなと思います。今日は松の枝振りのみの柄ですから、情景の想像力がより掻き立てられて楽しいのではないでしょうか。

最後に、同じく植山さんの綴袋帯。松に格天井ということで、基本的というか無難すぎる合わせ方と思われるかもしれませんが、これは地色の共通性で合わせてみました。個人的に好きな同色系です。

松のみを上品に描き上げた付下げですから、基本的に合わせ方の幅は広く考えられますね。季節も問いませんし、年齢層も幅広く、様々なお出かけに心強い一着になってくれると思います。素材と仕事の良さと併せ、おすすめな一品です。

 

©呉服のかわむら