かわむらの
日々

帯合わせ

明石縮

気がつけば4月も後半です。コロナ騒ぎのおかげで季節を感じる機会が少なくなってしまっていますが、新緑の季節もすぐ先のことですね。そうすれば夏もすぐやってきます。まだ空気に冷たさが残っていますが、夏物選びは既に始まっているのです。

昨年に続いて、浴衣や各産地の麻織物などの出足は好調です。当地では今年も夏祭りなどの中止が予想されていますが、そういったイベントとは関係なく着物ライフを楽しもうという方が増えていることを実感しますね。夏は気軽に着物を楽しむ良い季節です。

今日取り上げてみるのは、こちらの明石縮。「蝉の羽根」にも例えられる薄くしなやかな風合いが魅力の絹織物で、現在では十日町で生産されています。ですから、工芸品としての正式名称は「十日町明石縮」となります。

明石の人が伝えたから明石縮と言うとか、もとは明石で織られていたものから、西陣を経て越後に持ちかえったとか諸説あるようですが、19世紀末に十日町に伝わり、元からあった薄物を織る技術と融合した上で試行錯誤を重ね、明治時代の中頃に「明石ちぢみ」の名称で市場に登場したことは分かっています。以後、夏の高級織物として強い支持を得ていましたが、第二次世界大戦後の統制経済の影響などがあって昭和の時代には生産がほとんど無い期間がありました。平成に入り十日町で復刻生産され、現在に続いています。

簡単に明石縮の歴史を記してみましたが、今日は当店にある品で帯合わせをしてみます。まずはこちら。

縞の明石に博多の紗八寸帯。抑えた銀糸が涼感を呼びます。

これは店内陳列でも合わせていたので、顧客の皆様からは既視感のある組み合わせでしょう。帯屋捨松の「蝶に波」

宮岸織物の麻八寸帯。矢絣の色と合わせました。

夏物は着ている人が感じる涼しさも大切ですが、見ている人の目に与える涼感も重要です。多くの人から憧憬の目を向けられてきた明石縮は、その両方を兼ね揃えた織物と言えるでしょう。ぜひ手に取って味わってみてください。

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